ライアーゲーム

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ライアーゲーム

 初めて会った印象は、あまり笑わない男だと思った。いけすかない奴。でも客だから仕方がないわよね。 「先輩。助けてください。酷いお客さんで、私の事バカだバカだって。若いだけが取り柄ならいらないって言うんですよ。先輩ならベテランだからきっと気に入られると思うんです」  本当に馬鹿な子って思いながら微笑した。  まだ二十歳前で、顔も可愛いし、細いのに胸だけ大きくて、いつも愛想良くニコニコ笑って、頭は空っぽ。こういう女が良いって男はたくさんいるわよね。だからうちの店でも、売り上げ上位なんだけど……。  助けを求めながら、24の私を年増扱いって、本当に馬鹿よね。後ろで黒服が手を合わせて頭をさげてるし、よっぽど厄介な客なのね。いつもそういう客ばかり押し付けて。苦い笑みを浮かべながら席に向かう。  意地の悪い親父かと思ったけど、予想を裏切る若さ。しかも顔立ちも悪くない。驕った男なのかしら? 退屈そうに、ロックグラスの縁をなぞってる。 「お待たせしました。若い子は好みじゃないって聞いたから来ちゃった」     
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