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だけど次の瞬間、荒々しく襖が開かれ、あまり怒ることのない山口のおじさまが怖い顔をして部屋に入ってきたのだった。
「ばかもの」
と、怒鳴りつけられ、一君は口を「へ」の字に結んだ。
障子の裏側に貼りついていたトンボが声に驚いて飛び去ってしまう。
なんら言い訳をしないまま、一君は「食事抜き」の罰を言い付けられ、離れにある彼の部屋に追いやられてしまったのであった。
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一君抜きの夕食はいたたまれなく、末席に座ったわたしは箸をとらないまま俯いて座っていた。
額に包帯を巻いた広明兄さんは、気まずそうにちらちらとこちらを眺めている。
そもそも、塾で気に入らないことがあり苛立っていた広明兄さんが、わたしに八つ当たりをしたことが発端なのだ。
「武士の家だというが、本当か怪しいな。だいいち、おまえはおまえの父親にも兄にも、ひとつも似ていないじゃないか」
前後の会話など覚えていないし、どういういきさつで、普段そんなに関わることのない兄さんからこんなことを言われたのか、今となっては分からない。
ただ、確かに兄さんは父を失ったばかりのわたしにそう言い放ち、たまたまそこに居合わせた一君が激昂したのである。
「中野なんて姓が会津若松にあるかどうか、調べればわかることだ。どこの馬の骨かわからない、にせものの武士だろう……」
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