3人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
ぼくとヤマネ氏が身を起こした直後、テオフィルスがテーブルに載っていた山盛りお菓子の皿という皿を、突然片手でヒステリックに払い落とした。
「リデルッ!! あの尻穴女!」
けたたましい音がして、白い陶器の破片と多くのお菓子が草原で砕けた。
ぼくやレイクスだけではなく、ヤマネ氏までもが驚いて目を剥くなか、テオフィルスは両腕を振り上げて、長テーブルへと叩きつけた。
「人が親切に赤の女王の城に案内してやったってーのに、帽子もかぶらずに裏切ってんじゃないわよ!」
手に持ったシルクハットを振り回し、憤怒の形相でテオフィルスはティーポットを叩き割る。粉々に砕けた皿やポットを、足元の三月兎がポリポリと食べ始めた。
異様な光景だ。
さすがは不思議の国、さすがはイカレた帽子屋といったところか。
ヤマネ氏があわててなだめる。
「ちょ、ちょっと落ち着いてくださいよ、テオフィルスさん」
「ああっ!? 落ち着いてられるわけねーでしょうがっ!!」
三月兎が割れた皿を一枚食べるたび、デタラメなことに長テーブルの上には新たな皿と山盛りのクッキーやスコーンが復活してゆく。
「ンな~にが暴君よっ!! ふざっけんじゃねーわボケッ!! おまえのダーティーなアソコに三月兎を丸ごとぶち込んでハラワタごと口から引き抜いてさしあげてえわっ!!」
言葉が通じたのか、雰囲気を恐れたのか、三月兎があわてて退避した。
それでもテオフィルスは言葉にするのも躊躇われるほどの口汚い怒号を叫き散らし、何度も皿を叩き割った。
目を充血させ、額に血管を浮かせ、テーブルの上を薙ぎ払い、大声でアリス・リデルを罵倒しながら。
チェシャ猫の言ったように、見るからに危ない人だ。
「ヘイヘイヘイ、どうどう。コーフンした牛じゃないんだから落ち着きなよ、オネーサン」
レイクスがショートソードを鞘ごと持って、怖いもの知らずにもテオフィルスの頭をパァンと叩いた。
レレレレレ、レイクスさぁ~~~~んっ!?
ぼくとヤマネ氏はさらなる爆発被害を恐れて、互いに身を寄せ合う。
最初のコメントを投稿しよう!