1人が本棚に入れています
本棚に追加
宴の合間に
「雅彦くん、再婚する気はないかい」
ある時、お酒がすっかり進んだ父がぽつりと雅彦さんにこぼしたのを私は聞いてしまった。
「あの子はこの先、ずっと目を覚まさないかもしれない。
雅彦くんもまだ若い。
あの子のことは、うちで面倒を見るから、別の家族を持つのはどうだ?」
雅彦さんのお義父さんも黙って聞いていた。
雅彦さんは一人っ子だ。
このままじゃ、孫の顔も見せてはあげられない。
私は雅彦さんがどんな顔をしているのか、見たいようで見たくないようで、敷布団に顔を埋めていた。
「お義父さん」
雅彦さんのしっかりした声が聞こえる。
「俺みたいな気難しい性格の男、理穂さん以外にもらってくれる人なんていませんよ。
それに、綺麗事じゃなく、理穂さんはいつか目を覚ますんじゃないかって信じてるんです」
最初のコメントを投稿しよう!