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「理穂!いかないでくれ!理穂!!」
雅彦さんの声がすぐ下で聞こえる。
鳴り響く警告音。
『雅彦くん、再婚する気はないか』
父の声が意識の彼方で聞こえる。
本当は雅彦さんが職場をすぐ出てくる理由を知ってた。
『あそこの奥さん、ずっと意識不明で・・』
『旦那さんもまだ若いのに気の毒に・・・』
職場でも近所でも、みんなが腫れ物を扱うかのように、雅彦さんに接しているのを知ってた。居づらい中でも、雅彦さんが仕事を変えないのも、家を変えないのも、病室へ通い続けるのも、
全て私のためだ。
雅彦さんは信じていると言ってくれた。
でも、私が意識だけ抜け出た理由が今なら何となく分かる。
お前はは幸せ者だ。これなら、今度こそ眠りについても、文句はあるまい?
神様と言うものがこの世にいるのなら、その存在が私に言っている気がする。
そろそろ雅彦さんを自由にしてあげなくちゃ。
私は今度こそ、意識を手放した。
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