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ベッドマット
私が意識を取り戻した時、
まず不自然に感じたのは、ベッドマットの感触がなかったことだ。
まだ頭がふわふわしていて、いつも通りに寝返りを打とうと思ったのだ。
「まだ起きないつもりなの?」
そんな呆れたような夫の声を期待しつつ。
しかし、きしむベッドマットの感触はなく、代わりに
なにも感じなかった。
ひどく不安定なようで、しかし!はっきりと落ちない感触だけが伝わってきた。そう、まるで浮いているような・・・
私はおや?と思い、目を開いた。
目の前に見えたのは、まず、白い布だった。
自分の部屋にはないはずのものに一瞬混乱したが、どうやらカーテンらしい。でも、見えている位置がおかしい。
普通、ベッドであれ、敷布団であれ、カーテンの裾の部分や波打つ中間地点が見えるものだろう。
しかし、私の目に入ってきたのは、天井がカーテンを支える留め具部分とその下のベール部分だったのだ。
「え?なんでこんなとこに私いるの」
寝起き故か、私の声はひどく掠れていた。
そして、体もひどく重い。とりあえず、起き上がろうとしたが、上を向けばすぐに天井だった。
ふと、寝惚けた私の頭にひとつの可能性が浮かび、私は思い切って、ぐるんと寝返りを打ってみた。
すると、頭の隅で考えていたものの、現実ではあって欲しくなかった現実が眼下に横たわっていた。
恐らくは病室。
点滴を繋がれ、ベッドに横たわって目を閉じているのは、
天井近くで目を覚ましているはずの
私自身だった。
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