敷布団

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雅彦さんはめんどくさがり屋だ。 自宅が汚部屋と化しているのではないかと、戦々恐々の面持ちで私は雅彦さんに着いていった。 3年経った今も自宅は同じ場所だった。 最寄り駅から徒歩10分ほど。 閑静な住宅地の中の小さなアパート。 駅前は記憶よりも店が増え、人通りが増えていた。 雅彦さんはスーパーで食材を買って帰った。 今日の夕飯の食材らしい。 煮物かな? 記憶の中の夫は、 「大学生時代からインスタントラーメンとゆで卵しか作ったことはない!」 と堂々と言う人だったのに、変われば変わるものだ。 帰宅すれば、手洗いうがいをして、てきぱきと調理を始める。 その間に家のなかを見て回れば、少し物は増えたが、 綺麗に片付けられていた。 私がいた頃よりも、むしろ綺麗な程かもしれない。 家具はいくつか新調されているものもあった。 お互いの学生時代からの年代物ばかりだったから、寿命だったのだろう。でも、敷布団だけは私の記憶のままだった。 「こんな煎餅布団、すぐに買い換えてやる!」 って言ってたくせに。 つい手を差し伸べたが、私の手は敷布団をすかすか通過するだけだった。
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