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「むー、何だって何よ。起こしてあげたのにー」菜夏は不服そうにふくれっ面をした。ただでさえ童顔のせいか、そうしていると余計に子供っぽく見える。
この女子生徒の名前は、鏑流馬菜夏。
幼馴染み、というより……こいつとは兄弟同然の間柄で、更には今や俺が属する海神高校一年Aクラスのクラスメイトでもあるが……、まあいずれその辺のところは追々語られるだろうから今回はスルーする方向で。
「んぅー? 何だか誰かがあたしのことをぞんざいに扱ってる気がするの」
「……単なる思い過ごしだろ」
昔から勘だけは鋭い奴だ。こいつは近い未来にサイコメトラーとしてその名を全世界に轟かすであろう人物である(嘘)。
「んで、何の用だ?」
「もうっ。ハルったら起こしても全然起きないんだもん。HR《ホームルーム》も終わってとっくにみんな帰る支度してるよ?」
腰に両手を当てた菜夏は、働き蟻の全体でおよそ二割しかいないという働かない蟻を見ているかのような視線で俺を刺した。
「おー、そうかそうか。ご苦労であったな。では下がってよいぞ。俺はもう一眠りしてくるから」
菜夏をしっしっ、と手で払い机に突っ伏して再び夢の続きを――いたっ。
……頭をあげるとジト目でこちらを睨んでいる菜夏と目が合った。どうやら後頭部を叩かれたらしい。
「なんすか……」
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