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「『なんすか……』じゃないわよ。せっかく起こしたのに何でまた寝ようとするのよ」
やれやれ……菜夏は馬鹿だな。こいつは昼寝の何たるかを理解していないようだから昼寝マイスターであるこの俺が直々に教えといてやるとするか。
「……ふっ。何だ、そんなことか。そんなもん決まってんだろ?」
俺はビシっと机を指差してこれでもか、と菜夏に言ってやる。
「そこに、机があるからだ!」
「……馬鹿なの? 死ぬの?」
あ、菜夏さんが救いようのない馬鹿を見るような眼つきをしていらっしゃるぞ……。いやいや言っときますけど俺なりのユーモアを発揮しただけだからね? 本気じゃないからね?
「とりあえずあたしはちゃんと起こしたからね。……ああ、それとパパからの伝言で夏休みの間は家に帰って来いって言ってたから。パパ、ハルがいないと張り合いがなくて寂しいみたいだよ?」
パパっていうのはおわかりの通り、飼っているペットの名前ではない。正真正銘、菜夏の父のことである。訳あって俺は小さい頃からずっとこいつの家に厄介になっているのだが、高校に入ってからは鏑流馬家で貸し出しているアパートの一室を、自分の部屋として使わせてもらっているのだ。
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