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「帰って来いって……、別に部屋いるとき以外は毎日顔合わせてるだろ? 飯も風呂もいつもそっちまで行ってるんだし」
あのつるっ禿の豪快な親父が寂しい、ねぇ……。悪いがそんな柄じゃないけどな。こないだだって、何故か庭で相撲の勝負をさせられて何回転ばされたことか。ついぞ一回も勝てなかったわ。
「んー、やっぱり一つ屋根の下に居て欲しいんじゃないかな? あたしじゃパパとは張り合えないし。たまにはハルと男同士の付き合いでもしたいんじゃないの?」
「そうだなー。たまには一緒に風呂でも入って背中でも流してやるのも悪くないかー」
両手を頭の後ろで組んで椅子にもたれかかる。
「うん。たぶんパパも喜ぶと思うよ」
優しい笑みを浮かべた菜夏はふと、黒板の上の時計に目線を移し慌て始めた。
「あ、あたしそろそろ部活に行かなきゃ。じゃあ夕飯になったら呼びに行くね」
「おう。いってら」
手を振って見送ると菜夏は駆け足で教室を出て行った。それにしても剣道部は終業式の日にも部活があるのか……大変だな。
窓からグラウンドを見渡す。夏の熱射光線を浴びて野球部が部活に精を出している。
――退屈な終業式の後、夏休み中の注意事項を説明する担任の話を一通り聞き流している間に、どうやら俺は陽気な日差しに襲われ居眠りをしてしまったらしい。
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