第一章 ファーストコンタクト

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 いやあ、平和だなぁ……。高校も無事に入学できたし一学期の期末テストも平均のラインはクリアした。身の回りでこれといった事件も起こることもなく高校生活も早三ヶ月。そして明日から待望の夏休みだ。去年は塾の夏期講習やらでろくに遊べなかったからな。今年こそは去年行けなかった海へ行って泳ぎ回り、浜辺でビーチボールを打ち合い、別段旨くもない海の家でのカレーを味わって夏を満喫したいもんだ。……できれば女の子と一緒に(菜夏以外の)。  平和万歳。夏休み万歳。  呑気(のんき)にそう思っていられた日常は――突然に終わりを迎えることとなる。  この後で俺はとんでもない事件に巻き込まれることになるのだが……よもや、そんなことになろうとは、この時点では(まった)(もっ)て知るよしもなかったのだ。  ……そう。それは……、下校しようした際の出来事だった。  HRが終えぞろぞろと教室を出て行くクラスの連中に紛れて昇降口に向かった俺は、自分の下駄箱を開けて――静止した。そこに普段とは見慣れない物が紛れ込んでいたからだ。  ………………。冷静に下駄箱を閉じ、数秒間無心になる。  下駄箱に出席番号十、門藤の名札が付いてあるの再確認しては、首を捻り思わず独り言を漏らす。 「…………。気のせい、だよな……?」     
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