0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
雨が降ったら
雨が降ったら、僕は家を出ない。
天候に気分が左右されるのは、僕の欠点だ。
雨にも種類がある。
小雨、大雨、土砂降り、ザーザー雨に霧吹き雨、通り雨。
僕の知っている雨の形はこれくらいで、結局どれも雨で水の槍。
こういう日は何処にも出掛けず、家に引きこもりたくなるのがいつもの現象。
だから今日も僕は、スマホから友人に謝りの連絡を入れる。
「ごめん、やっぱり今日会うのはやめよう」
土壇場で友人との予定を断って、自分の予定も白紙に戻す。
決めている訳じゃない。けれど、いつもそうなってしまう。
罪悪感にうちしがれながら、自分で孤独を引き寄せている。
雨は強い敵。
無抵抗に濡らされて、体温を奪われ、せっかく作った僕が崩れていく。
髪は乱れ、鼻水は垂れ、色の変わった洋服でセンスは台無し。
最寄駅が遠いことも相まって、気持ちさえ萎れていく。
けれど、家に居る間の雨は温かい。
戦う必要がないとわかっていると、不思議と親近感が湧く。
雨がいつものように脅威で居てくれるおかげで、僕の心は落ち着く。
調子に乗って風なんかも吹かせた日には、少しだけわくわくする。
窓ガラスに打ち付ける雨の音と、風によって揺れる窓ガラスの音が、
最初のコメントを投稿しよう!