1 わたしとアイドル

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1 わたしとアイドル

 よくある、寂しい独身男のもとにひとりの天使が舞い降りた、そういう話に似ているかもしれない。  動画配信サイトHuluで映画を観ながら、食事するのが日課だった。  わたしは熱烈なAKB48のアンチだった。  音楽ファンのわたしにとっては、AKB48のCDの売り方が気に入らなかったのだ。  むかしはオリコンの順位が“いい音楽”を探すためのいくらかの基準になった。なかなか面倒くさい懐古厨みたいだが、まあ聞いておくれ。 AKB48が“付録付きのCD”を出しはじめて、チャートは意味のなさないものになった。  わたしの信条として、そのアーティストないし作家の作品を見たうえで批判しなければならない、というルールがある(だから、アンチは味方にもなる、という意見はあながち間違いではない――アンチは潜在的なファンなのだ)。  AKB48のドキュメンタリー映画をかかさず観ていた。  岩井俊二が監督したさいしょの作品は安いイメージビデオのようで、子どもの頃から映画を見続けているわたしからすると、精巧にできたゴミだった。  わたしはいまだに初期の曲、初期のメンバーを好きになれない。  ドキュメンタリー映画を二作目、三作目と進めていくうちに、AKB48というアイドルグループに関心をもっている自分に気がついた。  あいかわらずヲタクの気持ちはわからず、なぜ前田敦子、大島優子が人気なのか、「僕」という一人称を使う秋元康の歌詞も理解できていなかったが。
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