死因を告げる友人

2/10
前へ
/10ページ
次へ
「明日、死ぬ」  友人は、そう言った。  心臓が凍り付くような冷たい声と顔だ。 「なんだって?」  ぎょっとして僕は聞き返した。 「え? 俺、今何か言った?」 「言ったよ。明日死ぬ、って……」 「そんな物騒なこと言うわけないだろ」  怪訝な顔をしている。  空耳? 僕には確かに聞こえたのに。  金曜の昼下がり。暢気な私大生の僕達は、学食で駄弁りながら明日の遊びの予定を決めていた。 「じゃ、明日の十時に駅でな」  屈託のない笑顔で友人は去っていく。自信の死を予告した人間にはとても見えなかった。 (やっぱり空耳か……でも――)  妙な胸騒ぎを無視できなかった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加