死因を告げる友人

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 十一時三十分―― 「俺が轢かれるって言ったのか?」  避難するように入ったファミレスで友人の横断を引き留めた訳を話した。念のため道路から離れた奥の席を案内してもらった。 「やっぱり自覚がないんだ」 「さっぱり覚えてない。マジで言ってた?」  僕は真剣に頷く。 「あのまま渡ってたら多分……」  流石に友人も青ざめる。 「信じらんねえ……ま、まあでも、お前のおかげで助かったわけだ。サンキュな」  ウエイトレスが注文した料理をテーブルに置いて離れた。 「きたきた。気、取り直して食おうぜ」  僕も首肯した。不可解ながらも、ともあれ友人の死は回避できたのだ。 「刺されて、死ぬ」  あの声がした。友人を見た。あの顔だった。  僕は伝票と友人を引っ掴み、出鱈目に紙幣を四、五枚出し、レジに叩きつけて店を出た。  唖然としてされるがままだった友人が口を開くのに先んじて、ファミレスから絶叫と怒号が聞こえてきた。次いで押し出されるように客が店舗から流れ出てきた。店外からは、中でキッチン担当と見られる男性店員が、他の店員と客の数名に取り押さえられている様子が覗けた。包丁は鮮血で彩られている。  僕と友人は集まる人々の流れに逆らってその場を後にした。
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