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目の前に広がる血を見て、僕は死んだんだと思った。
信じられないけれど、血を流して倒れているのは僕。そしてそれを見ながら考えているのも僕だ。つまり、これは幽霊ってやつになったんだろう。
辺りに散らばる車のヘッドライトの破片。へこんだ白いワンボックスカー。これは事故ってことだ。
僕は事故に遭った?
ちょっと待て。あまり見慣れない場所だ。こんな所に来たことあったかな。
いや、記憶にない。僕は何をしていた?
「あのー、すみませーん」
僕の家はどこにあるんだろう。こんなに通行の激しい道路、知らない。
「聞いてますかー?」
今日は確か、高校でテストがあったはずだ。明日もテストで今すぐにでも勉強しなきゃならないはずが、どうしてこんな所に?
「浅間圭! 話を聞けー!!」
僕の、名前……。そうだ、浅間圭。
目立たない地味なその名前は僕だ。何だか少し思い出した。
「気づいてもらえました?」
「……誰」
「私、水先案内人のまりかと申します」
水先案内人。
そうか、僕の魂をあの世ってやつに案内してくれるんだな。
それにしても紫色の着物が良く似合う綺麗な大人の女性だ。喋り方がどことなく幼稚だけど。
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