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誘拐みたいなものか。いや、幽拐か。とにかく、僕が言わなきゃならないんだな。最初からそう説明してくれたらよかったのに。
「何よ?」
「いえ」
「で? なぜ死んだの?」
「わかりません」
「は?」
「思い出せないんです」
「は? 嘘だろ!!」
本性が見えてきた気がする。その形相は般若のごとく、僕を見下ろすその目は恐ろしく鋭い。
目で殺される。いや、もう死んでるけど。
「状況的に事故みたいなんですけど、どうしてここに来たのか。なぜ死んだのか、よくわからなくて……」
「あー。これ見てもわかる。確実に頭やられてるし、強い衝撃でふっとんだわけか」
「……はあ、多分」
「クッソめんどくせー!!」
吠えるように言ったかと思うと、まりかさんは僕を地面に押し倒す。
「記憶ないの?」
「はい」
「なぜ死んだかとか、ここ数時間くらいの記憶は?」
「全く」
「はぁぁぁ」
ものすごく嫌味のようなため息を吐かれる。僕は、何やら幽霊の中でも面倒臭い存在らしい。
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