最終章 未来

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三年ほど前、登美子先生経由から料理本の出版話が舞い込み、記念にでもなればいいねと軽い気持ちで引き受けたらその本が意外なほど売れてしまい、ついでに顔出しまでしていたのであっという間にイケメン専業主夫の料理人という訳の分からない触れ込みでちょっとした有名人になっていた。 その後も男性でも簡単に作れる家庭料理本を出版してそれもそれなりに売れ、いつの間にか料理研究家という肩書が付いていたのだった。 別に世間的に智也くんが夫であるということを隠している訳ではない。実際ご近所や子どもたちが通う幼稚園では有名な話だし、それで特に困っていることもない。 ただ今の場合は単純に私が言いたくないだけだ。 (だって先刻の子、智くんが私の夫だって分かったら会わせろとかなんとか言い出しそうな雰囲気だったもん) あの剣幕からしてそう察した故に答えを濁したのだ。 それにしても智也くんは凄い。専業主夫としての仕事もしっかりこなしつつ、その延長線で小金を稼いでいる主夫の鑑だ。 (私も負けていられない!) 改めて気を引き締め直し書類に向き合ったのだった。
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