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「ありがとうございました」
(はぁ……買ってしまった……)
何年かぶりに買ったもの。それが入った小さな紙袋をしっかりと握り締め家路を急いだ。
家に着き玄関ドアの鍵穴に鍵を差し込む手が少し震えていることに気が付いた。
(っ、なんで私、こんなに緊張してるの)
自分が思っているよりも正常な状態じゃないことに少し狼狽えた。
「……ただいまぁ」
いつもより若干小さめな声で帰宅の挨拶をしたのだけれど、いつも通りバタバタとやって来た息子と娘、そして少し遅れてから来た智也くんに出迎えられた。
「「お母ちゃん、おかえりなさぁーい」」
「京ちゃん、おかえり。そしてお疲れ様」
「あー……うん。智くんも、お疲れ様」
「……」
「……何」
智也くんが私の顔をジッと見つめている。下半身にじゃれついている双子を構いながら私も智也くんを見つめると
「京ちゃん、何かあった?」
「!」
突然の指摘に分かり易い程に動揺してしまった。
(相変わらず鋭いな)
朝のことといい、智也くんに隠し事は出来ないと早々に観念する。
「あー……うん。あの、ね」
「妊娠した?」
「うん……………え、えっ?!」
「したんでしょ」
「え、ちょ、ちょっと、なんでそんなこと知って」
智也くんの言葉にもはや動揺どころの騒ぎじゃない。
(何、この人、超能力者?!)
なんて阿呆なことを考えてしまうほどに慌てふためく。
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