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「はい、落ち着いて京ちゃん。検査薬とか買って来たの?」
「あ……うん……」
「じゃあそれ、先にやってみようか」
「……」
なんだか狐につままれているような感じだ。帰って来るまでに悩んでいたことが徐々に瓦解していっているような気分だけど、とりあえず買って来た妊娠検査薬を試すことにした。
そして──
「……陽性、だった」
思っていた通りの結果に色んな複雑な気持ちを抱きながら智也くんに報告した。
「おめでとう、京ちゃん! じゃあ今度は病院に行ってちゃんと診てもらおう」
「ちょっと待って、智くん!」
余りにも早い展開に私の方が追い付いて行っていない。
「何?」
「どうして? どうして私が妊娠してるって分かったの?!」
「だって六年前と同じだもん」
「へ?」
「京ちゃんの体調管理、誰がしていると思っているの。生理だって把握しているよ。トイレ掃除しているんだからね」
「っ!」
「ここ数か月なかったし、妊娠するようなこともしていた訳だし、少し前から食べる量も何となく減っていたからもしかしてと思っていたんだ」
「そ、そ、ですか……」
(智くんの方が私の体に詳しいって……ヤバくない?)
それだけありとあらゆる面でお世話になっているということなのかも知れないけれど。
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