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「というわけで京ちゃん、生んでくれるんだよね?」
「そ、それは……うん……」
「なんだか歯切れ悪いね。何か気がかりなことがあるの?」
「……」
この歳になっても授かったことは素直に嬉しいと思う。智也くんも喜んでいるし智也くんとの子どもが増えるのだって嬉しいと思っている。──だけど
「……六年前とはちょっと状況が違うかなって思うんだ」
「どういうこと?」
「今の私は会社ではそれなりに責任のある役職に就いている訳だし、もしかしてこの妊娠で周りに迷惑かけるんじゃないかって考えたり」
「……」
「それにまた智くんに負担をかけちゃうんじゃないか、とか」
「……」
「智くん、専業主夫だっていう割には色々仕事こなしているじゃない。収入面においても貢献してくれているし……それなのにまたひとつ負担が増えることになるのは申し訳ないっていうか、私、面倒ばかりかけているんじゃないかって──」
「京ちゃん!」
「!」
少し語気を荒げた声で名前を呼ばれた。滲み出る剣幕に少し畏怖を感じるくらいだ。
「それ、本気で言ってるの?」
「……え」
「面倒って何? 子どもが出来たことで俺に面倒をかけるって、負担が増えるってそんなこと思っているの?」
「……」
「俺は京ちゃんとの子どもが欲しくて、京壱と智花に弟妹がいたらいいなと思って、心から俺たち家族の元に来てって望んでいたのに」
「!」
智也くんの静かでいて、でも力強い言葉が続く。
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