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「京ちゃん、あったかいね」
「智くんもあったかいよ」
「俺、今、京ちゃんと赤ちゃん抱きしめているんだよね」
「そうだね」
「あー……ヤバい。本当、幸せ過ぎてどうにかなりそう!」
「どうしたの? 今日はやけに感情的だね」
「ん……なんだろう。よく分からないけどもうちょっとでこの子に会えるかと思ったらソワソワする」
「そうなんだ。でもそのもうちょっとはまだ少し先かも知れないけど」
「ううん。きっともうすぐ、だよ」
「?」
智也くんが何をもってそう言ったのか分からないけれど、その言葉通り翌日になって予定日より二週間ほど早く私に陣痛が訪れた。
何度体験しても産みの苦しさに慣れることはないと思う。でもだからといってその痛みから逃げようとは思わない。
苦しみの果てに味わえるとびっきりの幸福感を知ってしまっているから。
だから苦しくてめげそうになっても一緒になって頑張って生まれて来てくれた我が子をとてつもなく愛おしいと思う。
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