第五章 同衾

4/21
1062人が本棚に入れています
本棚に追加
/175ページ
昔から女癖の悪い男は嫌いだった。嫌いなのに何故かそんな男に惹かれてしまう自分がいることも自覚していた。 (だから私は恋なんてしない) 男なんて必要じゃない。結婚なんてしない。ずっとそう思って来た。 「ねぇ、今夜パーッと飲みに行かない?」 いきなり涼子が肩を抱いて来た。恐らく私に気を使って言ってくれているのだろう。その気持ちはありがたかったが言葉だけ受け取った。 「ごめん。今日は私の部屋に智也くんが引っ越して来るから行けない」 「引っ越し? 京のあの2DKの部屋に?」 「うん。登美子先生はもっと大きな部屋を借りるって言ってくれたんだけど私が今のところ引っ越すのが嫌だから断った。だって面倒でしょう? 引っ越しって」 「確かに。しかも期間限定だもんね」 「そう。だから智也くんが私の部屋に来ることになって少し部屋を片付けなきゃいけないから」 「そっか……大変だね、同棲も」 「だから同居。まぁ、半年のことだから家具とかの持ち込みはないから直ぐに終わると思うけどね」 「んー……じゃあ飲み会は又の機会に。その時は色々訊かせてね」 軽くウィンクをしながら涼子は社食を出て行った。それを見届けた私は心の中で気合いを入れ直し午後からの職務へと向かったのだった。
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!