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私が勤めるナギノクリーンカンパニーは清掃関連に於ける作業やレンタル業を主な生業にしている大手清掃会社。
社員は社員割引という形で業務のサービスを受けることが出来るため、私はそれを利用して月に一、二度、家の清掃を頼んでいた。
私の担当はいつもこの真戸くんだった。お客様利用率の高い真戸くんに作業を頼むのは中々困難で、友だちのよしみということで業務外時間に料金上乗せという形で頼んでいた。
そう、私、末永京は32になった今でも掃除は会社任せ。食事は社食か外食かコンビニか配達で賄い、洗濯はまとめてクリーニングに出すという家事全般ダメ女度に拍車が掛かっていた。
朝早くから家に来て約二時間。風呂場とトイレ、キッチンの清掃を終えて真戸くんは私が淹れたコーヒーで休憩していた。
「はいこれ。今回の支払い」
「どうも」
「いつも悪いね、真戸くんばっかりに頼んじゃって。奥さん、怒ってない?」
「別に怒っていない。おれの仕事理解しているし末永のことも知っている」
「だよねぇ。郁美ちゃん、出来た奥さんだよね」
「……あのさ、かなりお節介かもしれないけど」
「うん、お節介」
「まだ何も言ってない」
「言いたいこと分かっているもん。早く結婚しろって言いたいんでしょう?」
「……」
「言うだけ無駄だって。私、人見知りだし。真戸くん以外の作業員を家の中に入れたくないから無理いってるわけだし」
「……勿体ない」
「何が」
「金も末永も」
「お金は分かるけどなんで私?」
「おまえ、その気になれば相手、いるだろう」
「……」
「バリバリ働いてそこそこの役職就いてて、そんなおまえを支えたいって男、結構いるって訊いたぞ」
「それ、涼子経由?」
「……」
「全く……お喋りだな、涼子は」
無言は肯定と捉えた私はひと口コーヒーを嚥下しはぁと息を吐いた。
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