第四章 仮初

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登美子先生の旦那さんと娘さんは今、娘さんの習い事関係で出掛けているらしい。 「少し遠いのだけれど有名なダンススクールがあって、毎週日曜日は其処に通っているの。夫は送り迎えでいつも日曜日の半日はふたりがいないの」 にこやかに話す登美子先生の様子から旦那さんと義理の娘さんとの関係は良好なのかなと思った。 「──さて、わたしの話はこの辺で終わり。そろそろ本題に移ろうかしら」 「っ!」 (いよいよか~~~) 今、この状況にいる意味を少し忘れていた私は内心ドキドキし始めた。話ながら手際よく昼食の支度を終えた登美子先生がテーブルに着く。 テーブルには料理教室の先生らしく彩り豊かな料理が並んでいた。 「智也のことは放っておいていいから先に食べちゃいましょう」 「あ、はい」 「いただきます」 「いただきます」 手を合わせおずおずと料理に手を伸ばした。 「っ、美味しい!」 「そう言ってもらえて嬉しいわ。まぁ、一応本業にしているからね」 朝食を食べていなかった私にとっては出された料理ひとつひとつが眩しいご馳走の数々で、箸を進めるのを止められず黙々と食していた。 そんな私をにこにこしながら見つめている登美子先生の表情にある種の気持ちが芽生えた。 私にしてみれば登美子先生は尊敬すべき女性像そのものだった。仕事も出来て結婚して家庭も円満そうだ。 (なんだか羨ましい、なぁ……) 心の奥底でほんの少しそう思ってしまった。
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