第五章 同衾

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気合いを入れ臨んだ仕事は恙無く終わり、気が付けば終業時間になっていた。 (はぁ……疲れたぁ) 午後からはあちこちの部署を移動して数件の打ち合わせをこなしたので体力的にきつかった。だからといってデスクワークが楽かといえばそうでもない。 (というか楽な仕事なんてないわよね) 仕事に慣れるということはあっても楽になるという考えは未だに持つことが出来なかった。 会社を出たところで携帯から受信音が聞こえた。鞄から携帯を取り出し画面を確認するとメールが届いていた。 【お仕事お疲れ様。今から一時間後に京さんの家に行きます】 智也くんからのメールに少しだけ驚いた。うちの会社は基本残業が無く定時は18時だとあらかじめ伝えてあった。それを見越してか実にタイミングよく労いのメールをくれたものだと、何故だかこんな些細なことが嬉しいと思ってしまった。 会社から最寄り駅まで五分。其処から自宅近くの駅までは八駅分。三十分ほどの乗車時間。そして駅から自宅まで徒歩十分。逆算して考えると彼が家に着くまでに身支度などを終えるには程よい時間となる。 (まさかそこまで気を使っていないわよね?) たまたま偶然のメールで嬉しがっている気持ちを打ち消しながら帰路を急いだ。
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