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「あなたは……」
私は俯いたまま、口を開いた。
今の私がどうするべきか。それを決意するきっかけにもなるかもしれない。
そんな思いで、私は彼に訊いた。
「あなたは、なぜここにいるのですか?」
その一瞬。
彼の目に、悲しさのような、寂しさのような。そんな影が揺らいだのを感じた。
「僕がここにいる理由、ですか?」
「その……なぜ管理を手伝うことにしたのかなって……管理しながら、自分の本を見つけるためとか……?」
それとも、もう自分の本を探すことをやめたからか。
悪いことを訊いてしまったかもしれない、と心配した視線を向けている私に対して、彼は、そんなことか、とでもいうように笑った。
「いえ。もう本は見つけています」
えっ、と私は予想外の答えに面食らい、彼の顔に視線を向けた。
「じゃあ、どうして……?」
「見つけたからこそ、僕はここにいないといけないということが分かったんです」
彼は、そう言って自分が持っている本を棚におさめながら続けた。
「確かに僕も、自分の人生を知ることに恐怖を感じていました。けど、何があっても受け止めようって、思ったんです。生きていた自分を知らなければ、今の自分に、お疲れさまって、労いの言葉をかけることもできませんし」
本を整頓し終えると、彼は私に視線を戻して。
「その結果、ここにいないといけない理由を見つけることができて、本当に良かったと思っています」
「……自分の人生を見て、後悔はしていませんか?」
そう訊くと、彼は穏やかに笑った。
「はい。全く後悔はしていませんよ」
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