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「おや……そろそろお迎えが来たようね」
そう言うと、おばあさんはゆっくりと立ち上がった。
「見つかるまでどれだけかかるかは分からないし、その人生が良いものなのか、悪いものなのかも分からないけどね。どうであれあなたの人生は、きっとあなたのためになると思うよ」
おばあさんはそう言いながら、ゆっくりと前に歩いていく。やがて、そうね……と立ち止まると、私の方を振り返って、言った。
「人生っていうのは、生きていたあなたが、死んだあなたに残したメッセージなんじゃないかしら」
ハッと、目を見開いた。
生前の私が、死後の私に残したメッセージ。
その言葉を聞いた途端、心のつっかえがスッととれたような気がした。
そうだ。どんな形であれ、私の人生は今の私に何かを伝えてくれる。
それがたとえ悪いものだったとしても、それを知ることが、自分を知ることに繋がるのだ。
すぐにお礼を言おうと思ったが、おばあさんの姿はもうそこにはなかった。
私は、おばあさんのいなくなった、今はもう誰もいない空間に、深々と頭を下げた。
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