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「え……? これって……」
人生の文字が刻まれた一冊の本。私は、それをようやく手にすることができたのだ。
その本は固く閉ざされていて、自分の手で開けることはできない。
しかし、これは間違いなく私の本だ。
私の心が、そしてこの本が、そう言っている。
私が真っ先に向かったのは、最初に会った彼のもとだった。
彼は、一瞬ハッとしたような顔を見せ、やがて薄く笑ってくれた。
「見つけられたようですね」
彼にその本を手渡すと、彼は腰のポーチから鍵を取りだす。
その瞬間。
何だろう。脈打つ鼓動を感じる。
「……怖い、ですか?」
鍵を本にかざしながら、彼がそう言った。
その時、私は初めて自分の手が震えていることに気付いた。
怖くないと言ったら、嘘になってしまう。
でも、ようやく自分の本を、人生を見つけたのだ。長い時間をかけて、揺れ動きながらも。
なのに、何で今になって、私は……
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