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その時。
「お気づきになられたようですね」
声が聞こえた。爽やかで、優しそうな男性の声。
正面に立っていたのは、こげ茶色のエプロンを着た若い男性。その男性は私と目が合うなり、
「こんにちは」
と、優しく微笑みかけてくれた。
丁寧な挨拶に対し、私は反射的に中途半端な会釈を返す。当然、思考が全く追い付かない。
「あなたは……?」
「僕ですか……? 僕は、この図書館の管理を手伝っている者です」
彼は微笑んだまま、そう答えた。
歳は私と同じくらいなのだろうか。
しかし、これも実際は分からない。何せ、私は私自身の正確な歳まで分からないのだから。
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