最期のメッセージ

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 私が自分の本を探し出してから、少しの時が経ってからのことだった。  いつも通りの静寂を抱えていた館内に、突然。 「きゃああああぁぁっ!!」  恐怖。衝撃。それらに満ち満ちたような甲高い叫び声が、空間にこだました。  驚いて様子を見に行くと、事が気になって集まった人々が見つめる真ん中で、十五歳前後かと思われる女の子が、ガタガタと震えながらうずくまっている。 「いや……いやっ……!」  震える声と身体。頭を抱えて何かに怯える彼女は完全にパニック状態だった。  やがて、近くにいた管理人に支えられて女の子はその場を離れたが、場には喧騒が残る。  今のは、いったい。 「……気の毒ですね」  声に振り向くと、数冊の本を手に抱えた管理人の男性が、悲哀の色を瞳に浮かべながら立っていた。最初、私にこの図書館のことを説明してくれた彼である。 「あの子に、何が……?」 「おそらく、生前の記憶で何か恐ろしいことがあったんでしょう」  そう語る彼は暗い声で続けた。 「生前の人生が……必ずしも良いものとは限りません。苦痛な日々を過ごしていたり、無惨な最期を遂げていたりする可能性もありますから……」  つい、息をのんだ。  そう。私だって、どんな最期を遂げているのか分からないのだ。  それに、どんな怖い経験、辛い経験をしているかどうかも……  そう思った途端、自分の人生を知ることがとてつもなく恐ろしくなってしまった。
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