第一章

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より強くなるために、より強い力が必要だから“神清桜花”を狙って“妖”は来るのだと、宮司の神室光郎(かむろみつろう)は言った。 何十年も昔、“神清桜花”の木の皮を喰らい強靭な力を得た“妖”の話を聞いたことがある。 その“妖”は四つの村を潰し、三千人もの罪の無い人々を殺した。 神器(しんき)の一つ焔火剣(ほむらびのつるぎ)を用いて、ようやっと殺すことは出来たが被害は甚大であった。 もう二度とそのような“妖”を生み出さないためにも、神域に入ってきた“妖”は例えどんな雑魚であろうと抹殺しなければいけない。 桜木山は標高の低い山なので、隈なく見回っても二時間ほどで終わってしまうのだ。 「今日も平和ですなぁ」 欠伸を噛み殺しながら守人の一人、柊雷蔵(ひいらぎ らいぞう)は暢気に呟いた。 面長な顔はどこか優しく、細い目でいつも自然や動物たちを暖かく見守っていた。 彼が得意げに口笛を吹くと、どこからともなく百舌(もず)が飛んできて彼の肩に止まった。 「相変わらず、動物には愛されているんだな」 想太が呆れて言うと、雷蔵は嬉しそうに笑みを浮かべた。 (別に、褒めちゃいないんだけどな) それはあえて口にしなかった。 想太が彼と組んで一年ほど経つが、彼が戦闘で役立ったことなど一度もない。 背が高く、手足の長い彼だが戦いはもっぱら苦手である。     
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