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「それに、もうちょっとしたらちゃんと俺の役に立ってくれるんだろ?」
想太がそう尋ねて振り返ると、雷蔵がキョトンとした顔をした。
守人として、男として“妖”に背を向けることが格好悪いということぐらい雷蔵も理解している。
戦うのは嫌いだが、けして“妖”が怖いというわけではない。
彼は、優しいのだ。
刀で何かを傷つけるのを嫌っているだけなのだ。
例えそれが自分たちを脅かすモノであったとしても、彼は刀で何かを斬るのが嫌なんだ。
だが、そう言っていられないのが現実である。
守人となった今、戦うということは必然で、刀を持って“妖”を切るということは絶対なのだ。
雷蔵が毎日毎日夜遅くまで刀を振るい、稽古を積んで自分を鍛えていることを想太は知っている。
今はまだ“妖”を見て逃げ出しているが、そのうち自分の右腕となって戦ってくれることを想太は少なからず確信している。
だから、雷蔵と今も組んでいるのだ。
想太はキョトンとした雷蔵を尻目に、細く笑むと桜森村へと戻って行く。
当の本人はわけもわからず、首を捻りながら彼の後を追った。
守人の長である黒田孝之助に本日の報告を済ませると、想太は雷蔵と別れて自宅に帰った。
今年、想太は十七歳になるがいまだ所帯は持っていない。
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