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そうは言ってけして恋人がいないわけではないのだが、所帯を持つには問題が山積みになっていていまだ実家で生活している。
「ただいま」
そう言って玄関を開けると、何かが飛び出してきた。
「おかえりぃ~!!」
嬉しそうに言い、想太に抱きつく少女。
絹のように艶やかな黒髪に、きめ細やかで張りのある白い肌、細く華奢な体は安易に抱き上げることが出来る。
「春美月(はるみつき)…」
呆れたような、しかしどこか嬉しそうな顔をする想太を、抱きついてきた少女―春美月は満面の笑みを浮かべて見上げた。
「おかえり」
「うん。ただいま」
「へへっ」
春美月は、至極嬉しそうに笑う。
彼女が、想太の恋人である。
今年十五歳になる幼い子だが、桜花神宮の宮司である神室光郎の末娘で“桜の巫女”と呼ばれる役職についている。
想太の守人などよりも位が高く、神聖な女性のため結婚は出来ないと光郎より固く言われているためこうして時々想太の家に遊びに来るのが関の山である。
「で、お前、仕事はどうしたんだ?」
巫女の格好をしている春美月を睨み付けると、彼女は苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。
「えーっと…ちょっと、想太の顔が見たくなったの」
彼は、深いため息をつく。
「そんな好き放題するなよ。お前は“桜の巫女”なんだぞ?大切な仕事を賜っているんだ。ちゃんと自覚を持って――」
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