bake 第1章

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「こればっかりは、しょうがない事。カオリは辛いだろうが、うん…どうしようもないだろう。だから、せめてマコちゃんがカオリを見守ってやってよ。」 ユウ…さん? 何かが変だった。ユウさんまでも自分にカオリさんを見守ってって。 アキさんも自分にカオリさんを見続けて欲しいと言い。 そう言われたって、カオリさんにはアキさんしか見えてないだろうし。自分は、振られちゃったのに。何故に、自分にカオリさんの事を託そうとするのか、分からなかった。 ユウさんもそれ以上の事は、多くを語らなかった。あの雨の日の事を知らなかったユウさんなのに、全て見透かしている様な感じで。 結局、ユウさんの所に行っても何も変わらず、ただなんとも言えない違和感の様な物だけが残った。 カオリさんを見る事も無く、心配な気持ちだけが日に日に増していった。 その気持ちを我慢出来なくなり、平日のお昼休みを使って役場に行ってみた。 カオリさんは居た。 めずらしく髪の毛を後ろに縛り静かに少しやつれた感じで、仕事をしていた。 声を掛けようか躊躇っていたら、カオリさんがこちらに気付きじっと表情を変えず見ていた。 自分が軽く手を挙げ、声を出すこと無く挨拶した。一歩だけ踏み出した所で、カオリさんが席を立ち奥に消えてしまった。カオリさんは戻って来る様子も無く、自分も役場を後にした。     
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