ある朝の散歩

2/10
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 この世界じゃない世界のどこかに、小さな森があった。森にはあらゆる動物が住んでいた。そして森の一番はずれには、はぐれものの一匹の生き物グリンと人間の子供のニッキが住んでいた。  グリンは茶色の丸い大きな毛玉みたいな姿をしていた。手足は木の枝みたいにヒョロヒョロしたこげ茶色。毛玉の下に、ギョロギョロした目があったけれど、いつもにらんでいるみたいだ。  目がグリングリンしているから、他の動物たちから「グリン」と呼ばれていたけれど、名前かどうかはわからない。もしかしたら、「犬」とか「クマ」とか「ウサギ」みたいに、動物の種類を表しているのかもしれない。  それとも、ただの「目玉がグリングリンの奴」という意味なのかもしれない。     「グリン、頭に何か生えてるよ。」  ある日ニッキが言った。頭のてっぺんから、小さな木の芽が生えていた。  「抜いてもいいぞ。」  グリンは頭をニッキの方へ差し出して言った。ニッキはとんでもない!というように、ブンブンと首を振った。  「せっかく生えたのに、もったいないじゃないか。」  「それもそうだな。」  グリンは(うなず)いて、そのまま生やしておくことにした。  ある朝二人は食べ物を採るために、森に出かけた。グリンの頭の木の芽に、クモの巣が引っかかったので、ニッキが取ってあげた。  「ベタベタする。」  ニッキが言った。  「クモの巣、取らなくてもいいぞ」  グリンが言った。ニッキは少し考えていたけれど、首を振って言った。  「クモの巣がついたままだと、ちょうちょが引っかかっちゃうかもしれないし、落ち葉もくっついちゃうかもしれない。やっぱり取らなくちゃ」  けれど手でクモの巣を取ると、ニッキの手がベタベタするので、木の枝を拾って、それで取ることにした。  二人は木の枝を探すために、下を向いて歩いた。  きれいな石。赤い花。黄色い葉っぱ。  ニッキは色々見つけた。  食べられるキノコ、おいしい木の実、栄養のある草の茎。  グリンも色々見つけた。  「あれっ?」  ニッキは道の真ん中に、コロンと転がっている丸い物を見つけた。ニッキは走っていって、丸い物を拾いあげた。      
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!