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ニッキが拾った丸い物は、虹色のタマゴだった。大きさはニッキのグー、二つ分くらい。ほんのちょっとザラザラしている。
「持って帰る!」
ニッキはタマゴを大事そうに、胸の所に抱えた。
「食べるのか?」
グリンは虹色のタマゴに毒があったら困るな、と思った。
「違うよ。タマゴ、あっためてかえすんだ」
ニッキはグリンに言った。
グリンはまわりの木を見上げたり、まわりをキョロキョロしたりして、親を探したけれど、どこにも見当たらなかった。
「タマゴを孵したら、どうするんだ?」
家の方に歩き出したニッキの後ろから、グリンは聞いた。
「それよりタマゴ、食べちゃおう」
グリンは言った。
「イヤだ」
ニッキはタマゴをキュッと抱きしめた。
「このタマゴ、何のタマゴか分からないぞ。オバケのかもしれないし、毒ヘビのかもしれない。オバケもヘビも嫌いだろ?」
「うん。オバケもヘビも嫌い」
ニッキはうへえ、って顔をした。
「でもやっぱり、あっためる」
ニッキはタマゴをグリンの方に両手で持ち上げて見せた。ニッキにはタマゴから何が生まれるかは、どうでもいいことのようだ。
「このタマゴが孵ったら、一緒に暮らすんだ。グリンと僕と、このタマゴと」
「オバケでも?」
「うん」
「毒ヘビでも?」
「うん」
「気持ち悪くても? 凶暴でも?」
「うん。何でも」
「ふーん。それじゃあ、落っことさないように、家まではオレが持っていくよ」
グリンはタマゴをニッキから受け取ると、そっと抱いて、二人の家に持って帰った。
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