ある朝の散歩

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 「グリンの木の芽、虹色になってるよ」  「オレは見えない」  「僕は見える。それじゃあ、葉っぱをちぎって見せてあげる」  グリンが返事をする前に、ニッキは葉っぱをちぎってグリンに見せた。  葉っぱは半分透明で、虹色にキラキラ輝いていた。  「きれいだねえ……」  二人で葉っぱを見ていると、  「ぴっ!」  とレインが鳴いた。  ニッキが葉っぱをレインに差し出すと、レインは葉っぱをつついて食べた。  「食べた!」  ニッキは喜んで、跳びはねた。  「他の物も食べるかなあ?」  ニッキは、頭にレインを乗せたグリンを引っぱって、食べ物を探そうと、散歩に出かけた。  ニッキは木いちごを見つけたので、ドキドキしながらレインにあげてみた。  「ぴっぴっ」  レインは喜んで食べた。ニッキは食べられる物を見つけるたびに、レインにあげた。レインはニッキがあげるとなんでも食べた。  たくさん食べて、少し大きくなったレインは、うぶ毛がところどころ、まだらに抜けてきた。羽根が生えかわるのだろう。それで生まれた時よりもいっそうかわいくなくなった。  何度、森に散歩に出かけても、動物達はみんな隠れて出てこなかった。    「どうしてみんな、レインに会いに来てくれないの?」  ニッキがグリンに聞いた。  「アイツらはレインが虹色じゃなかったから、面白くないんだろ」  「でも、どうしてさ? レインが生まれるとき、お祝いに食べる物をくれたのに」  「お祝いにくれたんじゃない。アイツらは、食べ物で願かけしていたんだよ。自分たちと同じ動物で、虹色の特別なやつが生まれますように、って」  「ふーん。でも虹色じゃなくたって、グリンと僕はレインが生まれて嬉しいのに」  「オレもそう思う」  グリンは言った。  「アイツらは、オレたちもレインが虹色じゃなくて、ガッカリしていると思ったんだろ。だけどオレたちはもともと願かけなんかしてないんだからな。ガッカリするわけない」  「僕は願かけ、したよ。レインが生まれますようにって。お供え物はしなかったけど」  「お供え物なんかしなくたって、タマゴをあっためたんだから、それでいいんだ」
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