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薄暗いステージの中央、回答者の席にだけライトが当たっている。
「クイズ電気ショック、第10問目、最後の問題です」
静まりかえるスタジオで、司会を務める多宮四郎のクールな声が響いた。
テレビカメラは回答者の顔をアップでとらえた。
「鎌倉悪源太の異名で知られた源義平、彼を処刑した役人の名は? 三択です、1番は平清盛、2番は後白河法皇、3番は難波三郎恒房のだれか?」
宙に吊り上げられた席で回答者の顔がゆがむ、逡巡しながら口を開いた。
「い、1・・・番」
「残念、不正解。正しくは3番、難波三郎恒房。正解数3問以下は賞金没収で奈落の底へゴーッ!」
視界の多宮は青いボタンを押した。
シューッ、回答者を乗せた席が落ちる。舞台を突き抜け、さらに下へ。バチバチバチ、火花が飛んで、穴から煙が上がった。ぎゃあああっ、一瞬の悲鳴があって、ステージは静かになった。
「残念な結果でした。さて、当番組の最高賞金1億円を獲得できるのは誰か? クイズ電気ショック、次の回答者に登場していただきましょう」
フロアディレクターの合図で、観客席から拍手が起こる。ズズズ、せり上がってきた回答席には中年の男が座っていた。
「伊頭さんの前職はセールスマンですね」
男は黙ってうなづく。
「さあ、がんばって下さい」
フロアディレクターが人差し指で合図した。回答者の席が床から30センチほど持ち上がる。
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