死刑天国

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 3・・・2・・・1・・・0・・・イルミネーションが消え、席が床へ降ろされた。髪が焼け、焦げ臭い煙が立っていた。ステージ裏から白衣の一団が現れ、顔が茶色になった回答者の身体を調べる。 「呼吸停止、心拍停止、脳波停止。死刑囚の死亡を確認いたしました」  静かに報告して、白衣は退場。  赤青のライトが死体を乗せた回答席を照らした。ジャジャジャーン、派手な音楽が奏でられ、煌びやかな衣装のダンサーがステージ一杯に花を撒く。拍手の中、司会の多宮四郎が回答席に歩み寄って正面を向いた。 「見ず知らずの他人の家に押し入り、老夫婦を殺し、遊びに来ていた幼い孫の兄弟までも惨殺した恐怖の強盗殺人犯、伊頭凶作の死刑は完了いたしました。彼の獲得した賞金は、遺された家族へ渡されます。彼の、せめてもの償いと言えましょう。あらためて、事件の被害者の冥福をお祈りして、今週のクイズ電気ショックを終了いたします」  フロアディレクターの合図で、観客が拍手した。  多宮が深々と頭を下げる。画面はCMに切り替わった。 「この番組は、医療用電気器具の総合メーカー三途川電気と、介護用おむつでお馴染みタルタロスの提供でお送りしました」  もう一度、画面は多宮のアップになった。 「来週のクイズ電気ショック。この回答席に座る死刑囚は、日本に密入国したあげく、白昼に小学校を襲い、幾人もの児童を殺傷して日本中を恐怖のどん底に突き落とした、あの殺人鬼です。ご期待ください!」  また、画面が変わる。 「緊急特報! 来月の特番、クイズ電気ショック・スペシャル版は生放送! 毒ガス事件で千人を超える死傷者を出したカルト教団の幹部7人が登場! 彼らの最期を見とどけよ!!」  21世紀後半、社会は犯罪にあふれていた。犯罪者を捕らえて裁判にかけても、入れる刑務所が足りない。  政府は刑務所予算を削減するため、同時に犯罪抑止のため、死刑基準を大幅にゆるめた。  しかし、死刑囚が大量に発生して、刑務所では処理しきれなくなってしまった。そして、死刑執行は民間の手に委ねられた。  権利を買った最大手はTVだ。死刑は限りなくショーアップされた。 <つづく・・・いえ、続きません>
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