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サービスエリアの焼き立てパンを購入すると、齧りながら車に戻る。後部座席に移動すると、図師を助手席に乗せた。
「少し仮眠します」
新悟が絡むと、俺は少し理性が効かなくなる。冷静になって。ちゃんと考えてみよう。車のシートを倒して、天井を見ると何も無いので、むしろ色々と浮かんでしまった。
「市来、シートベルトは締めてね。出発するよ」
車が走りだすと、少し横の景色を見た。
影代わりなど、強制的なので腹が立つのだ。これが、自主的であったのならば、こんなに腹が立たないだろう。
滝沢はきっと、天才の弟を誇りに思いたいはずだ。そのせいで、常に比較されて惨めな気分になろうとも、自慢の弟という事実は変わらない。
こうして、考えていると、新悟に会いたくなってきた。
「俺はもしかして影代わり?新悟は天才だし、俺は兄だし」
興梠は、運転しながら長い溜息をついていた。図師もコメントに困って、横を向いてしまった。
「市来……君らの兄弟を見ているとね、どちらかというと、新悟君が影代わりだね。新悟君は、自己犠牲の精神を知っている」
それでは、まるで、俺に自己犠牲の精神が無いようではないのか。
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