第十章 大きな迷子 五

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「……酷いね……強制的な影代わりのシステムならば、廃止した方がいいね」  産まれた時から、犠牲になると決められている人生など、懸命に生きたいと思うだろうか。俺は、滝沢が影代わりを否定する気持ちが分かる。 「新悟も滝沢に共感しているので、消滅の危機になっている」  新悟が消滅するのは辛いので、滝沢を説得しようなどと、つい訂正して思ってしまう。  でも、新悟は俺の為に、命を懸けてくれそうだ。それは、俺が新悟を助ける為ならば、何でもしそうだと自覚しているせいもある。俺にとって、新悟のいない世界は無意味なのだ。  新悟のいない世界はいらないので、俺は新悟の為に命を懸けられると断言できる。  考え事をしていると、心配そうに興梠が俺を見ていた。 「市来、疲れたのならば、運転を代わる」  疲れたので無言なのではなく、考え事をしていたからだ。 「まだ、大丈夫です」 「市来、早く帰りたいのは分かるけど、無理しないでね……次のサービスエリアに入って」  興梠に命令されてしまい、仕方なくサビービスエリアに入る事にした。駐車場に車を止めると、確かに疲れていたと分かった。気が張っていたので、疲れに気付かなくなっていたのだろう。     
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