始まりの朝

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「先生、やりました」柴尾の声に反応し検体をまじまじと見つめる。 「本当か」 「彼女に異常はありません。数値も安定しています。あとは目覚めるのを待つだけです」 「おお、ついにやったな」赤石の顔に少しばかりの笑みがこぼれた。 「・・・」 「どうだ、まだ目を覚まさないのか」赤石はイラついているのを隠すように腕を組む。 「お静かに、今かすかなこえが」柴尾に言われ黙り込み赤石 「こ、こは、、どこですか」彼女がかすれた声で小さく言った。 「おおついに目を覚ました」赤石は彼女に走りより抱きしめた。 「貴方は誰ですか」 「私が分からないのか、まぁ仕方あるまい、あれから随分歳を取ったからな」 「赤石だよ、わかるかい?」彼女を抱きしめたまま赤石は言った。 「アカイシ?誰ですか、私は誰ですか」 赤石は愕然とした。今までどれだけの時間を費やして彼女を生み出したのかと、 その月日は無駄なのかとそう考えてしまったからだ。 「先生、焦らないでください。まだ目覚めたばかりで記憶が混乱している可能性がありますから、しばらく様子を見ましょう」
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