1人が本棚に入れています
本棚に追加
馬の頭を街の外へと向けると、足で馬の腹を思い切り蹴りつけた。
馬はバーンを振り落とさんばかりのスピードで走り出した。後ろで何やら男の声が追いかけてきたが、バーンの耳には届かない。
風を切り裂くようなスピードで馬は駆けていく。
よし、これならすぐに村に着けそうだ。
バーンは馬に振り落とされないように必死でしがみつきながら、そう確信していた。
爆発音を聞いて走り出したものの、人間の足ではピルゴスから村までは数日掛かる道のりだ。実際に、バーンがピルゴスにやってくるのにそれだけの時間を要している。
事態は急を要するのだ。数日も掛けていられない。
しかし、恐ろしく速いこの馬のスピードでも、間に合わないかもしれない。
いくら馬が速いとはいえ、人間の足でも数日掛かる道のりだ。どうしても数時間は掛かってしまうだろう。
猛スピードで掛けている馬に乗っているにもかかわらず、バーンには水の中を走っているかのようなもどかしさを感じていた。
いつの間にか、爆発音は止んでいた。複数の黒煙が立ち上るだけになっている。
黒煙は、やはり村の方角だった。
依然として、何が起きているのかは分からない。ただ、不吉なことが起こっていることだけは確かだった。
頼む。頼むから、気のせいであってくれ!村に帰ったら「なんだ、もう帰ってきたのか」とみんなで僕を笑い飛ばしてくれ!
バーンは心からそう願った。何かしらの悲劇が待っているのなら、自分が笑い者になった方がマシだと。
だが、胸の鼓動が、妙な胸の高鳴りが、それを確信づけている気がしてならなかった。
馬にも限界が近づいていた。まだ、村は見えてこない。
「もう少し、もう少しだけ頑張ってくれ!」
バーンの声に応えるように、馬はスピードを上げた。
やっと村にたどり着いたバーンの目に映ったのは、黒煙を上げ、崩れ落ちた家々が並ぶ、壊滅的な状態の生まれ故郷だった。
最初のコメントを投稿しよう!