胸騒ぎ

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 馬の頭を街の外へと向けると、足で馬の腹を思い切り蹴りつけた。  馬はバーンを振り落とさんばかりのスピードで走り出した。後ろで何やら男の声が追いかけてきたが、バーンの耳には届かない。  風を切り裂くようなスピードで馬は駆けていく。  よし、これならすぐに村に着けそうだ。  バーンは馬に振り落とされないように必死でしがみつきながら、そう確信していた。  爆発音を聞いて走り出したものの、人間の足ではピルゴスから村までは数日掛かる道のりだ。実際に、バーンがピルゴスにやってくるのにそれだけの時間を要している。  事態は急を要するのだ。数日も掛けていられない。  しかし、恐ろしく速いこの馬のスピードでも、間に合わないかもしれない。  いくら馬が速いとはいえ、人間の足でも数日掛かる道のりだ。どうしても数時間は掛かってしまうだろう。  猛スピードで掛けている馬に乗っているにもかかわらず、バーンには水の中を走っているかのようなもどかしさを感じていた。  いつの間にか、爆発音は止んでいた。複数の黒煙が立ち上るだけになっている。  黒煙は、やはり村の方角だった。  依然として、何が起きているのかは分からない。ただ、不吉なことが起こっていることだけは確かだった。  頼む。頼むから、気のせいであってくれ!村に帰ったら「なんだ、もう帰ってきたのか」とみんなで僕を笑い飛ばしてくれ!  バーンは心からそう願った。何かしらの悲劇が待っているのなら、自分が笑い者になった方がマシだと。  だが、胸の鼓動が、妙な胸の高鳴りが、それを確信づけている気がしてならなかった。  馬にも限界が近づいていた。まだ、村は見えてこない。 「もう少し、もう少しだけ頑張ってくれ!」  バーンの声に応えるように、馬はスピードを上げた。    やっと村にたどり着いたバーンの目に映ったのは、黒煙を上げ、崩れ落ちた家々が並ぶ、壊滅的な状態の生まれ故郷だった。
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