プロローグ

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 突如、天に輝いていた光の点の一つが膨れ上がる。見る見るうちに、超巨大な光の球へと変化した。膨張が収まると、光の球は光り輝く巨人へと姿を変える。  光ではっきりと姿を捉えることはできないが、それは紛れもなく人の形をしていた。違っているのは、背中にやはり光を放つ十二枚の翼。それは、恐ろしくも神々しい姿であった。  地上の悪魔たちにも変化が現れた。悪魔の軍勢の中心部へと、悪魔が集まり始めたのだ。悪魔たちは、融合してどんどん巨大になっていく。粘度のある毒のような禍々しいそれは、ドロドロと形を変えながら神の大きさと並ぶまでになった。悪魔の融合が終わりを告げると、それは漆黒の巨人へと形を変えた。  恐らく人間の形を模しているであろうそれは、どこまでも黒く、やっと五体を確認できる程度である。背中には、木の枝のような無数のとげが生えている。漆黒の体の中で、唯一、瞳だけが血のように紅く光を放っていた。その瞳を直視しただけで、気を失う者がいてもおかしくない。それほどの恐ろしさを秘めた瞳であった。  人間たちは、あれが魔王の姿であると確信した。  魔王が口を開くと、その口の中に巨大な漆黒の球が出現した。それは、すぐさま神に向けて発射される。  神は、まるでそれを初めから分かっていたかのように、軽々と避けてみせた。  頭の中を掻き毟られるような恐ろしい怒号。魔王の怒りが大気を、大地を震わせる。  魔王は、右腕を鋭い剣のように変化させると、神に向けて振り下ろす。神も左腕を同様に剣のように変化させて、それを受ける。魔王と神の剣が触れ合うと、バチバチと稲光が炸裂する。  続けて魔王は、左腕を同様に剣に変えて、振り下ろす。神も先ほどと同様に右腕を剣に変えて受ける。こちらでも、触れ合った剣同士が稲光を発する。  その時、神の背後に迫るものがあった。先ほど魔王が放った巨大な漆黒の球だ。狙った標的を追いかけるのか、神に向けて戻ってきていた。神がそれに気付いている様子はない。  巨大な漆黒の球が神の背中に触れる瞬間、それは音もなく消え去った。神も魔王でさえも、それを意に介している様子はない。  神と魔王の力のぶつかり合いによって、大地は激しく震動していた。このままでは、神と魔王との闘いの決着がつく前に、世界が崩壊してしまうのではないかと誰もが感じていた。
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