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「……いいや、バーン。そうではない。仇討ちなんてせずともよい。お主には、生きてもらいたい。炎の民の血を絶やさなければ、この先、魔族を倒せる人間が現れるやもしれん。身を隠すのじゃ」
「しかし……」
バーンは強く拳を握り締めた。村長がそれを見透かしたように諭す。
「お主の力を低く見積もっているわけではない。まだ、そのときではないというだけじゃ。フラムの力は、相当なものだからのう。それに、この村を出た炎の民もいる」
「……分かりました」
村長は、バーンの胸元に手を添えた。
「残っているわしの魔力で、力のきっかけを引き出してやろう」
「それだと、村長が……」
それに、村長は優しく微笑む。
「早かれ遅かれ、わしは燃え尽きてしまう。わしの力をもらってくれ」
バーンの瞳に、涙が溢れる。声を出してしまったら、泣き出してしまいそうで、バーンには頷くことしかできない。
胸元に添えられた村長の手が、ほんのりと暖かくなる。
その暖かさが引いていくのに比例して、黒い炎が村長の全身を包み込む。
「村長、ありがとうございます」
バーンは、村長の体が燃え尽きても、しばらくの間、村長がいた場所を見つめていた。流れる涙は、そのままに。
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