プロローグ

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 また、魔王が怒号を発する。それは、拮抗していた神と魔王のパワーバランスが崩れたことを表していた。  神の腕が剣状から、人間と同様のそれに戻る。違うのは、神の両手が輝きを増していた。  神の後方にいる天使も神と同様に、突き出した両手が光りを発している。  それによって、魔王の体が徐々に後ろへと押され始める。魔王の足元にいた悪魔たちも、同じように押されている。  悪魔の軍勢の背後には、穴が存在していた。深すぎて底を確認することができないほどの巨大だ。悪魔たちは、この穴から地上へとやってきたのだ。  神の軍団は、悪魔たちをこの穴へと押し戻したいらしい。ゆっくりと、ゆっくりとだが確実に悪魔たちは、大穴へと近づいている。  大地の震動は、尚も続いていた。しかも、振動はより大きくなっている。悪魔たちも必死で抵抗している証拠だろう。  どのぐらい時間が経過しただろうか。人間たちには、永遠にも思える時間だった。  ついに、魔王の片足が大穴に吸い込まれた。そこからは、あっという間だった。  すぐに魔王の体が大穴に飲み込まれ、上半身が出ているだけとなった。それに伴い、大地の震動が弱まる。  まるで底なし沼であるかのように、大穴は魔王を、悪魔たちを飲み込んでいく。やがて大穴から出ているのは、魔王の頭と両腕のみとなった。もう抵抗できる悪魔は、ほどんどいなかった。  悪魔たちが完全に大穴へ姿を消すと、大地の震動が収まった。  人間たちから、歓声が上がる。すると、光の巨人の姿である神が口を開いた。  まさに、神々しいその声は、頭の中に響いてきた。人間の中には、涙を流す者までいたほどだ。 「人間よ、悪魔たちは滅んではおらん。今の私では、魔王と力が拮抗しているため、悪魔たちを封印することしかできん。だが、案ずることはない。一つ、予言を残しておく」  神はそう言って、両腕を広げる。  太陽の光強まるとき 炎の力強まれり  炎は悪の王の身を焦がすであろう  それこそ魔の終焉のときなり  神の言葉が終わると、天使たちが次々と大穴の上へと集まる。 「これから、悪魔を封印する。これで、悪魔は地上に出てはこれなくなるであろう」  神も大穴の上へ移動すると、神と天使たちの体の光が強まる。それは、目を開けていられないほどに強烈な光だった。  光が収まり人間たちが目を開くと、大穴のあった場所には、天にそびえる塔が建っていた。
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