ピルゴス

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ピルゴス

 太陽の日差しが、力強く輝く。  それは、年々強さを増しているように感じられる。  ここ、天魔の塔を有する街ピルゴスにも、陽の光は燦々と降り注いでいる。  今、この街に足を踏み入れようとする少年がいた。  少年の名は、バーン・イーグニス。燃える炎のような紅い髪を除けば、どこにでもいるような普通の少年だ。  バーンは、天魔の塔を見上げる。  どこまでも高くそびえ立つその塔は、肉眼ではその頭頂部を確認することができない。 「あれが、噂に名高い天魔の塔か」  数百年前に建てられたという言い伝えが残る、石造りの塔。神が造ったという伝説を、バーンは学校の授業で習った。  天魔の塔と呼ばれるのは、塔を上れば神に出会え、地下に広がる迷宮には悪魔が住むという話からだった。  話の真偽は、天魔の塔を目指す人間がいるのだから、一目瞭然だろう。昨今は、悪魔が住む地下迷宮に足を踏み入れ、魔物が持つ秘宝、財宝を狙い一攫千金を夢見る冒険者が後を絶たない。  実は、バーンもその中の一人だった。  生まれ故郷を離れ、ここピルゴスに来たのもそのためだ。  バーンは以前からずっとそれを望んでいたのだが、村の掟で成人の儀式を受けるまでは村を離れることはできなかった。  先日、やっと十五歳になり、成人の儀式を済ませた。晴れて、村を離れる許しが出たのだ。  はやる気持ちを必死で抑え、先ほどやっとピルゴスに到着した。永遠とも思える数日間を耐え忍び、歩を進めてきた。  それがやっとのことで、報われる瞬間がやってきた。  バーンは、夢にまで見たピルゴスの街に足を踏み入れる。
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