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ピルゴスは、様々な商店で溢れていた。
武器や防具の専門店、珍しい道具を扱う店、地方料理を出す食堂に冒険者が集う酒場。冒険に関係ないところでは、雑貨屋に服屋。食べ歩きができるようなものを扱っている露店商まで。
あの女将の店以外にも、相当数の宿屋が存在していた。いったい一晩いくらになるのか考えが及ばないほどの豪華な宿屋から、一泊するのも恐ろしい質素極まりない宿屋まで、様々だ。
この街は、とても一日で全て回りきれるほどの大きさではなかった。
それでもバーンは、手ごろな店で一振りの名もなき剣を購入し明日の冒険に備えると、天魔の塔の下までやってきた。
ピルゴスの街は、天魔の塔を中心に広がっているようだ。まさしくピルゴスのシンボルである。
石造りの強固な塔は、真下から見上げると、恐怖を感じるほど巨大だ。
しかし、バーンには恐怖を感じている時間はない。明日には、この塔へ足を踏み入れるのだ。
決意を新たに、バーンは宿屋へと戻った。
食堂や酒場へ行ってもよかったのだが、バーンは宿屋で食事を取った。豪華とは言えなかったが、村の母を思い出させてくれるような温かい料理を味わうことができた。
そして、早めに床に着いたバーンは、あっという間に夢の世界へと誘われた。
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