洗礼

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洗礼

 翌日。とうとう夢にまで見た日がやってきた。  バーンは、しっかりと朝食を取ると、女将が作ってくれた昼食を受け取り、天魔の塔へと足を向けた。  バーンの他にも、冒険者はたくさんいるようだ。物々しい剣を持った剣士や見るからに重厚な鎧を身にまとった戦士などが、次々と天魔の塔へと吸い込まれていく。  今日も天魔の塔は、恐ろしいほどに巨大な姿で佇んでいた。日の光を浴びて、神々しささえ感じさせる。 「よーし、いくぞ!」  大きく息を吸い、腹に力を入れると、バーンは天魔の塔へと足を踏み入れた。  塔の一階は、閑散としていた。ただ、だだっ広い空間が広がっているだけ。一階は、巨大な一部屋になっている。バーンの想像よりも明るく、日の光が差し込んでいた。  他の冒険者たちは、どんどん部屋の奥へと進んでいく。バーンも、それに続く。  部屋の右手には、上へと向かう階段が見えた。  その階段の前には、巨大な岩や様々なガラクタが積み上げられており、物理的に上へと向かうことができないようになっていた。  巨大な岩の下には、何かの文字らしきものが見える。どうやら、何かしらの魔法でも上へ昇ることを制限しているようだ。  他の冒険者に続いて、部屋の奥にある階段を降りていく。  階段を一段降りるごとに、空気が変わっていく。ジメジメとした湿気のせいだろうか。それとも、これが魔物の住む空気なのだろうか。まるで粘度があるような、嫌な空気が身にまとわりついてくる。  地下一階に到着すると、他の冒険者たちが身支度を始めていた。複数人で集まっているところを見ると、仲間同士らしい。なるほど、バーンには一人で冒険するという頭しかなかったが、パーティを組むのも悪くない。むしろ、一人で冒険を続けるのには限界があるだろう。少し冒険したら、仲間を探そうかな。  バーンはそんなことを考えながら、迷宮の探索を開始する。  迷宮は、ところどころに光を発する苔が生えていて、探索に不自由はない。これなら、魔物が暮らすのも問題はないだろう。  ……魔物。自分の考えで、バーンはハッとする。そうだ。ここは、もうモンスターの巣なのだ。気を引き締めなくては。
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